コラム特集
「ジョーディ・スミスにチャンスが巡ってくるか!?」- F+コラム
Text by つのだゆき、Photo by snowy前半後半を通して1年間のツアーの中で、一度もポイントリーダーになったことのない、イエロージャージーを一度も身につけていない選手が年間ワールドチャンピオン、という現実に対する違和感がまだ消化しきれない。
獲得したトータルポイントもカリッサより10000ポイント近く少ないにもかかわらず、だ。なんかこうなっちゃうと、ポイントとかイエローとか関係ない感じになっちゃうよね。とにかく5位に入って、ファイナルズの一日を負けなきゃいい。
そう考えればこのシステムは、最近勝てなくなってきたベテラン勢には有利ともいえるかもしれない。例えばケリーだって、ケガでスキップしないで、もうひとつどこかでパイプやタヒチみたいな、クオーター、セミ以上の成績なら、5位とか可能だし、そのファイナルズの会場がパイプってことになれば、12回目のタイトルを50歳代で獲得って、現実的なシナリオになるシステムと言える。そこで……
質問
ジョーディってどうですかね? 年齢的にもそろそろ、な気がしますが、個人的にファンなので来シーズンは歯車かみあって欲しいんですが。
まさにこのジョーディとかにもチャンスが巡ってくるシステムなんだろうと思う。
若くしてツアーデビューしたジョーディは、いつかショーン・トムソン、ポッツ以来のタイトルを南アフリカにもたらす、とずっと言われ続けてきた。そう言われ続けてきたけど、単発での優勝はあれども、タイトルまではいかず、本気のやる気スイッチが入らないまま年齢を重ねているような感じがする。
デビュー当時は結構うまく回って、南アフリカのメディアの人に言わせれば、ちょっとその気になってハングリーさに欠けるという評価だった。
当時はまだサーフィンは中肉中背、あまり大きくない人が有利と言われていた時代で、動けるノッポがいなかった。おそらくジョーディってサーフィン界の動けるノッポの走りだと思う。それまでは身体の大きい選手は動きも重くスローで、素早く動く小柄な選手の軽く、スピーディな感じには太刀打ちできなかった。
しかし、動けるノッポが重くてスピーディという動きを獲得すると、長い手足が映える大きな動きは実にダイナミックで、小柄なサーファーには真似できず、勝負にならない。サーフィン選手にも大型化の波がやってきたといえるし、ジョーディはその先駆者のひとりだ。
2015年28位のあと、16年2位、17年4位、18年5位、19年3位と、スイッチ入った感というか、ジョーディ取る気できたな、という感じはあったけど、その後失速、22年は14位でクオーター以上の成績がない。
ジョーディのことを考えるとき、ついついジュリアン・ウイルソンと一緒のカテゴリーと考えてしまう。
ジュリアンも若くしてデビュー、いつかワールドタイトルとずっと言われていて、2017年3位、18年にはいよいよか、と思ったし、今年取れなければもうジュリアンはないだろうな、と感じていた。結局18年のタイトルはガブで、ジュリアンは2位。その後失速し、昨年引退した。
ふたりとも実力的には取ってもおかしくないと思うし、いつか取るべきと考えるファンも多いし、個人的にも、まぁ、そうだよな、と思う。でも取らないんだろうな、という感じも同時にある。
本当にほんの少しのことなんだけど、何かが足りない。ふたりとも取るタイミングのチャンスはあったけど、それを逃した。チャンスというのは一度逃すとそう何度もやり直せるものではない。
ご質問の方はジョーディファンなので、祈るような気持ちなんだろうけど、まずは5位に入ることを願うしかない。そのためには、アップダウンなく、不得意な場所でも最低クオーター以上、という成績が必要だ。コンスタンシーを生むのは粘り。なんかジョーディもジュリアンも、負けるときにあっさりし過ぎ、と感じるのは私だけだろうか。なんか彼らが負けパターンに入るとジタバタのジの字もなく、無抵抗に負けていく感が強い。諦めが早いというか、自滅というか。
たぶん花が咲くとすれば、35歳という年齢的にも来シーズンがラストチャンスなのかな、とは思う。私もジョーディのダイナミックなサーフィンは好きだから、もしチャンスが巡ってきたら、なりふり構わず、ジタバタしてほしいと思う。
BCM の Facebook に「いいね!」をしよう
※当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等を禁じます。