コンテスト
2019年のワールドチャンピオンが決定!『Billabong Pipe Masters』ファイナルデイ
2020年東京オリンピックの選手選考も兼ねた2019年のCTは、男女賞金同額化、R3以降を全てマンオンマンにするフォーマットの変更や、エアーショーの開催、元CT選手のパット・オコーネルのコミッショナー就任など様々な話題と共にスタート。
前半戦は右膝の怪我から復活したジョン・ジョン・フローレンス(USA)の強さが際立ったものの、ブラジル戦で怪我を再発させてしまい、タイトル争いから脱落。
五十嵐カノア(JPN)がバリ島でCT初優勝を果たして多くの日本人サーファーを奮い立たせたのもシーズン前半のこと。
後半戦は昨年同様にガブリエル・メディナ(BRA)が一気に追い上げて異例のタイトルコンテンダー5名の混戦でヨーロッパレッグに突入。
そして、最終戦『Billabong Pipe Masters』では2勝同士のガブリエル、イタロ・フェレイラ(BRA)の2名が最後まで争い、共にファイナル進出。
優勝した方がワールドタイトル獲得という理想的なクライマックスに。
イタロが感動的な優勝劇
PHOTO:© WSL/Sloane
今シーズンの『Billabong Pipe Masters』はトライアルからグッドコンディションに恵まれていましたが、コンテスト2日目にR4(Round of 16)を戦うベスト16が決定してからウネリと風が合わず、1週間のレイデイが続いていました。
ファイナルデイはウェイティングピリオド前日の12月19日、公式6-8ftレンジのサイズでトレードウィンドが強く、前半のヒートはバレルになる波が少なかったものの、QFに入ってからはパイプライン、バックドア共にいくつかの強烈なバレルが姿を現し、クライマックスを盛り上げていました。
ブラジリアン、グーフィーフッター同士のファイナルはイタロが先行。
今年の「J-bay」でもファイナルを戦ったこの二人。その時はラスト5分でガブリエルが逆転勝ちをしていましたが、今回は最後までイタロのペース。
シェーン・ドリアン、ジェイミー・オブライエンを味方につけ、タイダイカラーにイタロ自身の似顔絵と「STOKE-ED」と入ったTシャツを着た応援団もイタロがスコアを出す毎に大いに盛り上がり、ブラジリアンではエイドリアーノ・デ・ソウザ、ガブリエル・メディナに続く3人目のワールドタイトル、パイプマスターの座を獲得することに成功しました。
「信じられない。現実とは思えないね。このトロフィーを手にいれるために一生を捧げてきたんだ。これは亡くなった祖母と叔父に捧げるよ。1ヶ月前にパイプに来てボードのテストとトレーニングを重ねていたんだ。このトロフィーは自分にとって言葉では説明出来ないような大きな意味がある。ケリー、ガブリエル、ヤゴ、全てのサーファーと良い勝負が出来たね。彼らは自分に多くのエネルギーを与えてくれるし、毎日ベストを尽くすように努力したよ」
PHOTO:© WSL/Heff
SFではパイプラインで7度の最多優勝記録を持つキングケリーを完璧に抑え、ファイナルでは最大のライバル、ガブリエルを倒したイタロ。
エイドリアーノ・デ・ソウザがタイトルを獲得した時にジェイミー・オブライエンが指導したように、シェーン・ドリアンがサポート。
1ヶ月の間、ガブリエルを倒すという大きな目標を達成するためにパイプラインで経験を積んだことでプレッシャーに打ち勝ち、勝つための忍耐力も身に付けたのです。
「今年はアップダウンが本当に大きかったから、タイトル獲得には大きな意味がある。コンテストが始まる前、このトロフィーを見て本当に欲しいと思ったんだ。たった今、自分の物になった。さあ、お祝いが始まるよ。今年は特別な一年だったさ。全てを神に感謝したい」
2019年、開幕戦で優勝しながらも第7戦終了時点でR3止まりが3度と昨年同様に成績の波が大きく、タイトルは難しいと予想されていたものの、9月に宮崎で開催された『2019 ISA World Surfing Games』で金メダルを獲得したことで勢いが増し、ヨーロッパレッグで2位と優勝。
カレントリーダーの座を手に入れて最終戦に挑んでいました。
全てが決まった後、感情を爆発させて雄叫びを上げながら、ちゃっかりイタロ応援団のTシャツを着たジェイミー・オブライエンなどに担がれてビーチ凱旋を満喫したイタロ。
インタビューブースの前では大号泣。インタビュアーのロージー・ホッジも落ち着くまでマイクを向けるのを待っていたほどでした。
PHOTO:© WSL/Sloane
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誰もが驚く勝負強さを見せたガブリエル
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タイダイカラーをテーマとしたイタロ陣営に対してイエローで統一したガブリエル陣営。
惜しくも3度目のタイトルは逃したものの、同じブラジリアンのカイオ・イベリとの因縁の対決では、カイオのスコアと目の前の波による逆転される可能性を天秤にかけて故意にインターフェアを犯してブロック。
状況を完璧に把握していなかった人にとって意図が分からない行動でしたが、ガブリエルとコーチの継父チャーリーの計算尽くの判断で、「ゲームをプレイしただけだよ」と冷静にコメント。
次のライバルのジョン・ジョンとのQFではプライオリティを持っていた時に入ったセットを先に乗らせ、何故行かせたのか?と思わせた後に倍以上のサイズのセットを完璧にプルインしてファイナルデイのハイスコアを9.23をマーク。この場所で育ち、誰よりも波を知るジョン・ジョンをコンビネーションに追い込んで圧勝した時は多くの人がガブリエルの日だろうと感じたことでしょう。
「私達を応援してくれた全ての人に感謝したい。波も含めて本当に楽しい期間だったよ。世界最高のサーファーの一人、ジョンと争うことは大好きださ。あれは特別だったね。本当にこの波でサーフィンするのは気持ちが良い。大好きなこの場所でサーフィンさせてくれた全てのローカルに感謝したい。自分自身を誇りに思い、今は次の展開を楽しみにしているよ」
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トリプルクラウンはケリーが3度目の獲得
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ジョン・ジョンが最終戦で復帰して5位に入ったことで2020年東京オリンピックの出場権は惜しくも逃したケリーでしたが、イーサン・ユーイング(AUS)、ミシェル・ボウレズ(PYF)、ジャック・フリーストーン(AUS)の間で争っていたトリプルクラウンのタイトルを1ヒート差で獲得。
『Billabong Pipe Masters』のR3(Round of 32)ではイベント唯一のパーフェクト10をバックドアでマーク。
あの一本によって1998年以来、21年振り、3度目の栄冠はより特別なものになったと言えます。
「この仕事を21年間計画してきたんだ(笑) 最初の2回はワールドタイトルを獲得することに集中してパイプラインにフォーカスしていただけで、トリプルクラウンのことは考えていなかったのさ。今回はとても嬉しいね。楽しい締めくくりになったさ。みんなに感謝したい。とても楽しい一年だったし、欲しいものが手に入った。もし、今年ここに来てあの10ポイントを出した波だけに乗っていたら、大成功だったのにね。本当に嬉しいよ」
今年で37年目を迎えたトリプルクラウン。
その長い歴史の中でハワイアン以外でタイトルを獲得したアスリートは10名のみ。
その内、アメリカ人はケリーとグリフィン・コラピントの僅か2名。
ケリーが獲得した3個目のトロフィーは、サスティナブル・アートと呼ばれる地球環境に配慮したアート、ルーベン・アイラが彫ったサーフボード型。
最後に「もう一周しようかな」と来年もツアーを回るようなコメントを残して47歳ケリーの2019年シーズンは終了しました。
ちなみにイタロをサポートしたシェーン・ドリアンはノースショアにあるケリーの別荘に滞在。
サンセットでのトリプルクラウン第2戦ではシェーンの息子、ジャクソンにボードキャリーを任せ、ケリーなりの経験をさせていました。
数年後、ジャクソン・ドリアンが頭角を現す可能性も十分にあるので、覚えておきましょう。
ひょっとしてケリーはこの世代とも対戦するかもしれません。
PHOTO:© WSL/Cestari
2020年東京オリンピックに出場するCT枠
PHOTO:© WSL/Cestari
2020年東京オリンピックの選手選考の優先順位トップとなるCT枠。
メンズは10名、ウィメンズは8名の枠があり、特にメンズのアメリカ代表、ジョン・ジョン・フローレンス、ケリー・スレーターの争いが注目されていましたが、ジョン・ジョンがCTランキングで1つケリーを上回り、代表に決定。
このために最終戦に間に合わせたジョン・ジョンは、「最高の気分だね。このイベント、パイプマスターに戻ってきた目標が達成出来たし、嬉しいね。膝の回復のために出来る限り少ないヒート数でサーフィンしたかったんだ。オリンピックでアメリカを代表することが出来ることは本当に嬉しい。ここハワイでのみんなのサポートなしでは達成出来なかったさ。1ヶ月前までサーフボードに立つことさえ出来なかった自分が今日ここでガブリエルとQFを戦えた。これは自分の望む以上のものだったよ」と話していました。
以下、全てのリストです。
アメリカ
コロへ・アンディーノ、ジョン・ジョン・フローレンスオーストラリア
オーウェン・ライト、ジュリアン・ウィルソンブラジル
ガブリエル・メディナ、イタロ・フェレイラフランス
ジェレミー・フローレス、ミシェル・ボウレズ日本
五十嵐カノア南アフリカ
ジョーディ・スミスウィメンズ
アメリカ
カリッサ・ムーア、キャロライン・マークスオーストラリア
ステファニー・ギルモア、サリー・フィッツギボンズブラジル
タティアナ・ウェストン・ウェブ、シルヴァナ・リマフランス
ジョアン・ディファイコスタリカ
ブリッサ・ヘネシーPHOTO:© WSL/Sloane
2020年CTルーキー
PHOTO:© WSL
これで2019年全てのスケジュールが終了。
ランキングも確定して2020年のCTを戦うメンバーが決定。
ルーキーはジャック・ロビンソン(AUS)、マシュー・マクギリヴレイ(ZAF)の他、オアフ島カフクで生まれ、オーストラリアのニューキャッスルで育った20歳のモーガン・シビリック。
返り咲き組はイーサン・ユーイング(AUS)、フレデリコ・モライス(PRT)、アレックス・リベイロ(BRA)、コナー・オレアリー(AUS)
一方、QSでもリクオリファイを果たせず、CTから脱落したのは、ウィリアン・カルドソ(BRA)、ジェシー・メンデス(BRA)、マイケル・ロドリゲス(BRA)、セバスチャン・ズィーツ(HAW)、エゼキエル・ラウ(HAW)、ジョアン・ドゥルー(FRA)、ソリ・ベイリー(AUS)、レオナルド・フィオラヴァンティ(ITA)、リカルド・クリスティ(NZL)、エイドリアーノ・デ・ソウザ(BRA)、マイキー・ライト(AUS)
エイドリアーノ、マイキー、レオナルドの内、2名には怪我人によるワールドカードが与えられる予定。
なお、2019年のルーキー・オブ・ザ・イヤーはオアフ島ローカルのセス・モニーツが獲得。
最終戦でもキーマンとなり、コンテストを盛り上げていました。
ちなみにケリーが2度目のトリプルクラウンを獲得した1998年にセスはまだ1歳。
ケリーがどれだけ長い間、第一線で活躍しているかが良く分かります。
PHOTO:© WSL/Cestari
『Billabong Pipe Masters』結果
1位 イタロ・フェレイラ(BRA)
2位 ガブリエル・メディナ(BRA)
3位 ケリー・スレーター(USA)、グリフィン・コラピント(USA)
5位 ヤゴ・ドラ(BRA)、ジャック・フリーストーン(AUS)、ジョン・ジョン・フローレンス(HAW)、ミシェル・ボウレズ(PYF)
2019 Men’s Championship Tour 最終ランキング
1位 イタロ・フェレイラ(BRA) 59,740pt
2位 ガブリエル・メディナ(BRA) 56,475pt
3位 ジョーディ・スミス(ZAF) 49,985pt
4位 フィリッペ・トレド(BRA) 49,145pt
5位 コロへ・アンディーノ(USA) 46,655pt
『Vans Triple Crown of Surfing』公式サイト
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