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Hurley Japan “ノースショア・キャンプ” 直撃インタビュー

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早くからコーチングのシステムを導入して世界でも結果を残している「Hurley Japan」。
特に大原洋人は2015年の夏にCT第8戦『Hurley Pro at Trestles』にワイルドカードでの出場を果たし、『Vans US Open of Surfing』では優勝。
あの歴史的快挙の後に行なったインタビューから約半年、オアフ島のノースショアに滞在中の「Hurley Japan」メンバーに直撃!

今シーズンはサンセットビーチにある「ハーレーハウス」からベルジーランドから歩いてすぐのパット・オコーネル宅に拠点を移し、チームマネージャー・糟谷修自の元、大原洋人(今回はワールドジュニア参加のために不在)、大橋海人、河村海沙、関本海人。本格的にノースショアの波に取り組むのは初となる田中大貴、志田下オープンの優勝で招待された小笠原由織が武者修行中。

現実味が帯びていたクオリファイへの取り組み。フィジカルトレーニング、メンタル面の強化。インタビューを重ねる毎にそれらは具体的になり、日本人がワールドツアーの舞台に立つことが夢物語ではないというのが十分に伝わってくる内容でした。
4年後に迫った2020年の東京オリンピックの話も含めたロングインタビューです。


■BCM
ポルトガル・エリセイラで開催されたワールドジュニア。イベント前半はバックアップ会場での難しいコンディションで行なわれ、後半は回復傾向の中、メイン会場へ移動。大原洋人はQFまで進んでいましたが、序盤にミスを重ねて悔しい敗退となりました。
この結果についてどう思いましたか?


●糟谷修自
ポルトガルではサーフィンや、ボードの調子も良く、ハイスコアも出していたし、いけると思っていました。
QFの会場になった「Ribeira D’Ilhas」(ライトのポイントブレイク)は、潮の動きでコンディションが変化するし、リーフブレイクながら、クセもあって難しい波なんですよね。
調子が良かっただけに残念でしたが、これが試合です。
“上手いサーファーが必ず勝てる”というわけではありませんから・・。

©WSL 

■BCM
今回の大原洋人には「Hurley ヨーロッパ」のチームマネージャーのPhilippe Malvauxがコーチとしてサポートされてましたね。
彼はどんな人物ですか?


●糟谷修自
彼はジャッジの経験もあり、ジュリアン・ウィルソン、ジョン・ジョン・フローレンス、ミシェル・ボウレズなど、多くのCT選手をサポートしている優秀なコーチ(昨年優勝、今年準優勝した前田マヒナのコーチも務めた)です。
私も洋人のライディングは映像でチェックしながら連絡を取っていましたが、彼のサポートは大きかったと思います。


■BCM
今後、CTに入るためにやるべきこと、必要なこととは?


●糟谷修自
『US Open』優勝で大きくフォーカスされた昨年、これまでQSの大きな大会にも多く出場し、経験を積んできました。そして、シェイパーとの関係性も強まってきました。
洋人に限った話しではありませんが、クオリファイを目指す以上はハワイのパイプラインを始め、タヒチ、フィジーなど大きい波も乗れなければならない。
テクニック、戦略、メンタル、さらに上のステージに上がるためにやるべきことは沢山ありますが、まずはコンスタントに勝てる力が必要だと考えています。

©WSL 

■BCM
次に大橋海人プロに質問です。
現時点でクオリファイを果たすために何が必要か具体的に考えていますか?


●大橋海人
サーフィンの実力、テクニック的はもちろんですが、自分的には「メンタル」の部分が最も大きい部分だと思っています。
慣れない国、波、相手が誰であろうと、まずはいつも通りのサーフィンをすることが大事だと思います。
サーフィン以外の時間でも、意識できる部分は色々あるんですよ。
例えばゴルフをしている時や、仲間とサッカーゲームをしている時もそうです。


■BCM
昨年、WSLジャパンツアーでは初戦の「Trump Hyuga Pro」で優勝、全4戦でも総合1位のリージョナル・チャンピオンとなりましたが、今年のスケジュールなどを教えてください。


●大橋海人
昨年は、QS10,000(QSで最もグレードが高いイベント)の出場権を得ることが目標でした。それが達成できたので、今年は全てのQS10,000に出場したいと思っています。
他にもスケジュールなどを考えながら出場予定です。得意な場所、不得意な場所ありますが、カリフォルニアのローワーズやハンティントン、ブラジルの「サクレメア」なんかは好きな場所なので、狙っていきたいと思います。

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■BCM
関本海人プロに質問です。
今年の目標、狙っている場所などは?


●関本海人
自分が最もフォーカスしている部分は、チューブやビッグウェーブでのサーフィンです。毎年ハワイにもなるべく長く滞在するようにして、コンディションの良い場所を狙っています。
今年もまだ1ヶ月ほど期間がありますので、パイプ、バックドア、オフザウォールなどを中心にコンディション次第ではサイズアップしたワイメアも狙ってみたいと思っています。


■BCM
ハワイ以外でチャレンジしたい場所は?
何か特別なトレーニングは行なっていますか?


●関本海人
日本では台風シーズンの南西諸島。
海外ならタヒチ・チョープーもチャレンジしてみたいという思いはあります。
なかなか実現できませんが、日本でサイズアップする機会は限られているので、一般的なトレーニングは欠かしません。
波が無い日、サーフィンできない日も、海・水の感覚を忘れないように水中でのトレーニング、水泳もやっています。



■BCM
河村海沙プロに質問です。
今年の目標や目指している場所、実施中のトレーニングや取り組みなどは?


●河村海沙
今年の目標は試合で少しでも良い成績を残すことです。
昨年はシーズン始めに足の中指を骨折、治りかけにまた同じ場所の靭帯を痛めてしまい、試合にあまり出られませんでした。
今回のハワイに照準を合わせて治療に専念し、今は8割〜9割程度回復していますが、かなり長引いてしまいましたね・・。

■BCM
具体的なスケジュール等は決まっていますか?


●河村海沙
海外の試合はシーズン後半のハワイ(QS)はぜひ出たいのですが、シードの問題もあるのでまだ未定です。
今年はJPSA中心になると思いますが、こちらも昨年は欠場が続いてしまったので、R1からの出場になる試合が多そうですね。
勝ち上がるにはヒート数をこなせるだけの体力が必要ですから、しっかりと体調を整えつつ、フィジカルトレーニングにも力を入れたいと考えています。


■BCM
田中大貴プロに質問です。
昨年のJPSA、初戦のバリでは本戦R3敗退と惜しくも公認ならずでしたが、台風スウェルでサイズアップした田原で見事プロ公認を取得。トライアルは全て1位通過、そのまま本戦をSFまで勝ち上がり5位入賞と、大きい波で結果を出していますね。
地元福岡はあまり波が無いエリアと思いますが、大き波は得意?ハワイでは良い波に乗れましたか?


●田中大貴
ハワイには3年前に一度来たことがありますが、本格的なノースは初めてです。
ハワイへ来て1ヶ月、少しずつ慣れてきて、バックドア、オフザウォールなどで良いチューブを抜けたこともありました。
正直、大きい波はあまり得意では無いのですが、周りには上手いサーファーばかりで毎日が「学び」です。
日本へ戻るまでに、少しでも吸収して帰りたいと思っています。

■BCM
ライバルとして意識している選手はいますか?
今後の目標や、実施中のトレーニングなどあれば教えてください。


●田中大貴
普段から意識している選手はいませんが、試合になれば、相手は皆ライバルだと思っています。
高校時代は宮崎の学校へ通っていました。これまでは、自分なりに走りこんだり、肺活量を鍛えるトレーニングなど個人的に行ったことはありますが、専門のコーチやトレーナーの方に指導頂くような機会はあまりありませんでした。

プロ1年目となる今年、色々な試合に出て、少しでも良い成績を残したいと思っています。
JPSAが中心になると思いますが、出場できればQSイベントも出たいですね。
「今後」の目標の中には、もちろんオリンピックの出場も含まれています。

©colorsmag“yoge” 

■BCM
ちなみに今回のノースショア・キャンプでは、糟谷修自さんの提案で新たなトレーニングを実施されていると聞きましたが、どのような内容でしょうか。


●糟谷修自
「柔術」がベースになっているトレーニングです。
サーフィンにとって重要な体幹を鍛え、バランスや瞬発力などを強化するものですが、2015年のワールドチャンピオンになったエイドリアーノ・デ・スーザも実施しているメニューで、彼はチャンプを取る前も取った後も続けていますね。
サーフィンがスポーツである以上、やはり基礎が大事。年齢やレベルは関係なくパフォーマンスを上げるために必要なトレーニングと考え、今回導入しました。


■BCM
チームメンバーがそれぞれの目標を持ち、ここハワイで経験を積んで、様々なトレーニングに取り組んでいると思いますが、彼らが勝つために今やるべきこととは?


●糟谷修自
メンタル、フィジカル、大きい波でのサーフィンもそうですが、世界と同じレベルでトレーニングを行うことも重要。これは自信にも繋がる部分がありますよね。

試合で言えば、コンスタントに良い成績を残せる安定したサーフィンを目指しています。
今年からCTにクオリファイする五十嵐カノア、昨年のワールドチャンプ、エイドリアーノ・デ・ソウザも同じタイプのサーファーと思いますが、1ヒート毎の結果を積み上げていくような努力。それには日々のトレーニングからなるメンタルの強さが必要です。

©colorsmag“yoge” 

■BCM
メンタルと言えば、大原洋人を例に出すと先日のワールドジュニアの敗因はミスをした部分が大きかったと思いますが・・。


●糟谷修自
技術、道具、それと同等に重要なことはメンタル。
限られたチャンスを物にできるかという力です。

今回の洋人は、世界中のトップジュニアが集結した試合でも最も高いスコア(ヒートトータル)を出していますし、実際にミックやオーエンが唸るようなライディングを見せることもあるんですよ。
しかし試合では、数少ないチャンスで実力を出せなければ勝つことはできません。これらは選手側の課題でもあり、同時に私達コーチ陣の課題でもあります。実力があっても勝てない選手は山ほどいますから。

選手ひとりひとりに強い部分と弱い部分があり、それぞれの個性やクセもある。
試合前の調整はもちろん、試合中もです。力を出し切るにはどうすべきか、崩れてしまったリズムをいかに取り戻すかを、選手と一緒になって取り組んでいます。


■BCM
4年後に迫った2020年の東京オリンピックについては?


●糟谷修自
4年後のオリンピックを視野に入れると、10代のサーファーにも大きなチャンスがあると言えるでしょう。
サーファーの低年齢化は海外でも顕著です。
11歳〜12歳くらいのサーファーでも明らかにレベルが異なる選手はいますが、そのステージに上がるには時間もかかりますからね。今から強化すべき点は多いと思います。
良い先輩、指導者に出会えるかという点も重要ではないでしょうか。

今回のハワイキャンプは、昨年の『SHIDASHITA OPEN OF SURFING』フルオープン(18歳以下)で優勝した15歳の小笠原由織を交えてキャンプを行っています。
(残念ながら、この日は体調不良によりインタビューは不参加)

海外ではウェーブプールも増えているし、サーフィンへの注目度は世界中で高まっていますからね。
「Hurley Japan」としても、チームの垣根を越えた活動や、若いサーファーの活躍の場を増やしていければと考えています。


■BCM
最後に今回のハワイキャンプに密着しているカラーズマガジン「吉田“yoge”憲右」氏より一言。キャンプの様子やメンバーの雰囲気など教えてください。


「Hurley Japan」のハワイキャンプは毎年密着させてもらってますが、その内容は年々本格的になってきていますね。
昨年よりも今年は海以外のトレーニングが増え、海で実際にコーチングを受けながらのサーフィンも増えているように思えます。
ライディングをチェックしながらの個々に向けたアドバイス、海から上がればビーチですぐにプロ同士のディスカッションが行われ、ターンのバリエーションやテクニック、ボード性能についてのフィードバックなどが随時交わされていて、チームメンバーのモチベーションも上がっていることが分かります。
結束も強くなり、個々が目標を持って取り組んでいる。
その姿勢を皆さんにお伝えできればと思っています。


skypeで現地ハワイを直撃! 

本インタビューの後、現地ハワイには新たなビッグスウェルが到達。
各ポイントでノースショアらしいセッションが繰り広げられるなか、WJCを日本人最高位となる5位でフィニッシュした大原洋人も合流。各メンバーがそれぞれの目標に向かって、引き続き熱の入ったトレーニングが続けられていました。

今シーズンのキャンプ日程も残りわずか。お互いを刺激し合い切磋琢磨する各メンバーの様子や毎日のリポートはカラーズマガジンでぜひチェックしてみてください。
また、間もなく開幕の「Volcom Pipe Pro」には大橋海人、大原洋人も参戦。こちらもお見逃しなく!



Hurley Japan
web http://www.hurley.jp/
facebook http://www.facebook.com/HurleyJapan

カラーズマガジン
http://www.colors-magazine.com/

取材協力&提供 Hurley Japan / Terrestrical Inc


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