コンテスト
『Billabong Pipe Masters』は感動的なファイナルデイに!
ダークホースのウェイド・カーマイケル(AUS)のハレイワでの優勝から始まった今年のトリプルクラウン、次のサンセットはミック・ファニング(AUS)がハワイでキャリア初の優勝を決め、4度目のワールドタイトル獲得に向けて良い流れを掴み、最終戦のパイプラインへ。
パイプラインでは、正式名称の『Billabong Pipe Masters in Memory for Andy Irons』に記されているアンディ・アイアンズの弟、ブルースがリプレイスメントとして参加を認められ、32名の選手で争われたトライアルでは17歳のオージー、ジャック・ロビンソンが強豪ハワイアンを相手に優勝。パイプラインの前で育ったJOBことジェイミー・オブライエンと共にワイルドカードの枠を獲得。
ウィメンズのスペシャルヒート『Pipe Invitational』では、3度目のワールドタイトルを獲得したばかりのカリッサ・ムーア(HAW)がメンズ顔負けのバックドアのバレルをメイク。
ミック、フィリッペ、エイドリアーノ、ガブリエル、オーウェン、ジュリアン。ワールドツアーの歴史上、初となる6名の選手が絡んだタイトルレースでは、トライアルが行なわれた日の朝のフリーサーフィン中に頭をリーフにヒットしたオーウェンが脳出血と診断されて欠場。ミックはファイナルデイの前日に兄の訃報を受け、感情を抑えながらの戦いを強いられるなど様々なニュースやドラマがありましたが、最後はエイドリアーノが自力で悲願のワールドタイトルを獲得して全てのことを忘れさせるような感動的なシーンがライブ中継を通して世界中に配信されました。
「信じられない気持ちだよ。一番の親友だったリカルド・ドス・サントスに捧げたい。彼は亡くなってしまったけど、記憶を残すために彼と同じ場所に同じタトゥーを彫ったんだ。’強さ・バランス・愛’これは今年のワールドタイトル獲得に全て必要な言葉でもあった。タイトルレースの最中は自分よりもミックがふさわしいと思っていた。彼はとても強い人で、3度もワールドチャンピオンになっているからね。ミックの母とハグをしたかったけど、タイトルレースの最中だったから、それは怖くて出来なかったよ。ミックを押し退けてタイトルを獲るなんてしたくなかったさ...。
これで人生の目標を達成した。ファイナルでガブリエルと戦う余力があるかは分からない。彼はディフェンディングワールドチャンピオンだし。ガブリエルがトロフィーを手渡してくれる場面がいつも頭の中にあった。そして、これから彼とファイナルを戦うんだ。どんなアプローチをするかは考えていないけど、休憩が必要さ。’レッドブル’を飲んでから海に戻るよ」
今年1月に正義の代償として尊い命を失ったリカルド・ドス・サントス。天にいる彼へのメッセージが記されたサーフボードでオーストラリアレッグでは3位、2位、優勝と驚異的な成績でカレントリーダーの座へ。シーズン中盤は失速してこれまでか...と思われましたが、カリフォルニア、フランスを2位と3位でフィニッシュ。
大きな鍵を握ったポルトガルではR3敗退の13位でランキングも2位から3位に下げたものの、最後は数年前から文字通りジェイミー・オブライエンの門を叩いてトレーニングを重ねたパイプラインでハードだったイベント前半からバレルが少なくなってしまったファイナルデイまで明らかに今までと違うパフォーマンスを披露。最後はパイプラインではポイントが伸びないマニューバーまで使って執念の勝利を収め、10年間追い求めてきたワールドタイトル獲得に成功したのです。
「ポルトガル戦で敗れた時は心が折れたよ。対戦相手のヴァスコ・リビイロは素晴らしいサーファーだったけど、あれでチャンスを逃した気持ちが強かった。でも、敗退した後にミックが’心配するな。最後はパイプで決まる’と声をかけてくれたんだ。ミックには’あなたの方がもっとチャンスがあるよ’と返したけどね。タイトル獲得に多くを捧げてきた。ジェイミーや、ジェイソン・フレデリコ、ホームの多くの人が支えてくれた。そして、亡くなった兄にもこのタイトルを捧げたい。彼が7ドルのサーフボードを最初に買い与えてくれたんだ。7ドルのボードから世界のトップに立ったんだよ。あの時は自分にとって7ドルだって信じられないくらい大金だったんだ」
ブラジル・サンパウロの貧困層で育ったエイドリアーノ。7ドルのサーフボードから始まった彼のサーフィン人生は大成功を収め、ブラジルとカリフォルニアに家を建てて遂には世界一に。
しかし、その道はとても険しく、厳しいものだったのが今までのどのチャンピオンよりも流していた涙の量で分かると思います。
SFでミックがガブリエルに敗退し、エイドリアーノがメイソンに勝った瞬間に決まったワールドタイトル。大喜びでビーチに戻り、彼を待ち切れない仲間達が次々と海に飛び込んで祝福。岸に上がる前に担がれ、その先頭には影の立役者となったジェイミーの姿が...。
昨年、ブラジリアンとして初のワールドタイトルを獲得したガブリエルの時のようにビーチにはブラジルの国旗が舞い、まるでサッカースタジアムにいるような合唱。ブラジルではサッカーの次に人気があるサーフィン。それを象徴するような異常なまでの盛り上がりを見せていました。
エイドリアーノはファイナルでガブリエルと対戦。プレッシャーから解放された彼に良い流れが持続し、バックドアで気持ち良くバレルを抜けて7.67をスコア。トータル14.07でガブリエルを抑えて再びビーチ凱旋を楽しみ、インタビューブースへ。
「ワールドタイトルのトロフィーのために戦ってきたから、パイプマスターは特別ボーナスさ。パイプラインのチャンピオン。ジェイミー、ケリー、ビード・ダービッジ。他にも沢山名前を連ねている。そこに自分が加わることになるんだね。今は考えがまとまらない。神様に感謝する。素晴らしい気分さ。ワールドチャンピオンに友人のガブリエルとのファイナル。出来れば10ftのパイプライン、ビッグバレルで彼と二人でやりたかったけど、今日の海はこんな感じになってしまった。でも、パイプ、バックドアに変わりはないよ」
2年連続のブラジリアンによるワールドチャンピオン。そして、45年目にして初のパイプマスターの誕生。もちろん、ブラジリアン同士のファイナルも初。更にガブリエルはトリプルクラウンの座を手に入れ、これもブラジリアン初。
「ガブリエルに海で言ったんだ。’貴方の存在無しで自分のワールドタイトルはあり得なかった’とね。彼が見本を見せてくれたんだ。ワールドチャンピオンへの道を切り開いてくれて感謝するよ。彼の家族にも感謝したい。彼は人間的にもチャンピオンさ」
ワールドタイトル獲得直後のインタビューとは違い、ファイナルを終える頃には早くもチャンピオンの風格を備えていたエイドリアーノ。
3Xのカリッサ、トリプルクラウン獲得&2位のガブリエル、トライアルの勝者ジャックと共に舞台に上がった表彰台では、パイプマスターズの波をモチーフにしたトロフィーの次に光り輝くワールドチャンピオンの大きなトロフィーが昨年のチャンピオン、ガブリエルからエイドリアーノに手渡され、高々と持ち上げて熱烈なキス。副賞にはWSLのスポンサー、Jeepから新車をプレゼントされていました。
最後のインタビューでは、J-Bayでミックがシャークアタックに遭い、ライバルであるにも関わらず空港から戻ってきたことを尋ねられ、「あの時は、彼が亡くなったことを想像したんだ。競争相手と同時に私達は家族だよ。サーフィンの世界は小さなコミュニティさ。そこで3度のワールドチャンピオンを失うことを考えてしまった...。自分は10年間この舞台にいるけど、アンディ・アイアンズが亡くなった時は本当に悲しかった。今年は親友のリカルドを失い、自分にとってとても厳しかったんだ。心が引き裂かれたね。そして、サメがミックを襲ったと聞いた時はショックだったよ。だから、彼が無事と聞いて本当に嬉しかった。彼は真のチャンピオン。ミックと再びタイトル争いに戻れて喜んだよ。もし、今回負けてトロフィーを持ち帰れなくても、彼ともう一度戦うつもりだった。全てを含め、本当に嬉しい。もっと喋りたいことはあるけど、この続きはパーティーでね(笑)」
「シーズンはとても長い。このトロフィーを手に入れるためには、素晴らしい波から2ftの小波。10ft、5ftまで全ての波で勝てないといけない。全てのコンディションに対応するのは本当に難しい。10年間学んだことを全て合わせないといけない。この地球に助けられ、エネルギーを感じることが出来るのは嬉しいよ。以上、こんな感じかな(笑)」
最終戦の結果によって来年のトップ34が決定。詳細は後ほどお伝えしますが、今回QFまで進んだアダム・メリング(AUS)が23位でリクオリファイを逃し、ジャドソン・アンドレ(BRA)までが22名の枠に入っています。
QSでは重なっているCT選手を除くとカイオ・イベリ(BRA)、ジャック・フリーストーン(AUS)、五十嵐カノア(USA)、アレックス・リベイロ(BRA)、コナー・コフィン(USA)、ライアン・カリナン(AUS)、デイヴィー・キャッスル(AUS)の7名がルーキーとして仲間入りします。
注目はアメリカ国籍ながら日本人の両親を持つ五十嵐カノアでしょう。
また、C.J・ホブグッド(USA)が1999年から17年間のキャリアに終止符を打って引退。
最終戦ではR1でパーフェクト10をメイク。最後の対戦相手はQFのガブリエルでした。
グレン・ホール(IRL)も引退して今後はマット・ウィルキンソン(AUS)のコーチとしてツアーを回るそうです。
『Billabong Pipe Masters』結果
1位 エイドリアーノ・デ・ソウザ(BRA)
2位 ガブリエル・メディナ(BRA)
3位 ミック・ファニング(AUS)、メイソン・ホー(HAW)
5位 C.J・ホブグッド(USA)、ケリー・スレーター(USA)、アダム・メリング(AUS)、ジョシュ・カー(AUS)
2015年WSL Samsung Galaxy Championship Tour
最終ランキング
1位 エイドリアーノ・デ・ソウザ(BRA) 57,700pt
2位 ミック・ファニング(AUS) 54,650pt
3位 ガブリエル・メディナ(BRA) 51,600pt
4位 フィリッペ・トレド(BRA) 50,950pt
5位 オーウェン・ライト(AUS) 43,600pt
WSL公式サイト
『Vans Triple Crown of Surfing』公式サイト
photo: WSL Covered Images
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