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“US OPEN”日本人初の快挙の裏側(後編)

©WSL / Sean Rowland  

“USオープン優勝” という快挙で、夢のワールドツアー入りが現実味を帯びてきた大原洋人。
これまで日本人サーファーが誰も成し得なかった“クオリファイ”まであとひとつ。

しかしWSLが開催するイベントスケジュールはちょうど折り返し地点、これからの後半戦でどのような結果を残せるかに注目が集まっている。
そう、2015年のコンテストはまだ半分も残っているのだ。

今後のQSイベントはもちろん、現役CT選手のランキングによっても来年のツアーメンバーは変動するため、まだまだ目が離せない状況。残るイベントのどこに照準を合わせるか、シーズン終了までにどこまでランキングをアップ、または維持できるか。

WSLファンの方には言うまでもないが、今回のビッグニュースをキッカケにコンペティションの世界にも興味を持ってくれた方、または普段サーフィンをされない方にも興味を持って頂くため、ワールドツアーから見る大原洋人のポジション、ツアーメンバーの仕組みなどをまとめなおしてみたいと思う。



TOP 34名で争うワールドツアー“CT”
©WSL / Kirstin Scholtz  

別名“ドリームツアー”とも呼ばれている世界最高峰のサーフィンレースが、Championship Tour = CT。

お馴染みケリーやミック、ガブリエルなど34名のエリートサーファーが世界中のベストウェーブを転戦し、“ワールドチャンピオン”の座をかけて競い合うエンターテイメントかつドラマティックなコンテストツアーである。
この34名のツアーメンバーに入る(クオリファイ)ためには、言わば2部リーグともなる Qualifying Series = QS でランキングを上げなければならない。

来シーズン、2016年のCTメンバー(WSL TOP34)は以下で構成される。
1. 2015年CTランキングで、TOP 22名
2. 2015年QSランキングで、TOP 10名
3. WSLが定めるワイルドカード 2名(※)

いまだ日本人サーファーは誰も届いていないクオリファイを果たすには、QSランキングでTOP10入りを目指すこととなる。

※WSLワイルドカードは、大会毎に設定される2名(イベントワイルドカード)とは別枠。怪我などが原因でCTに残れなかった(リクオリファイできなかった)ツアーメンバーを対象にWSLが特別に定めるもの。(2015年はC.J.ホブグッドとグレン・ホール)



QSイベントの最高グレード "US Open"
©Michael Lallande  

CTへのクオリファイを目指す世界中のコンペティションサーファーは、自身のランキングを上げるべく様々なQSコンテストに出場し、上位入賞を目指す。
現在、世界各国で開催されているQSイベントは5つのグレード(1,000、1,500、3,000、6,000、10,000)に分かれており、当然ながら、グレードが高いほど賞金額や獲得ポイントが高く、強豪選手も多くなる仕組み。
さらに「QS10,000」に至っては、QSランキングで100位以内のサーファーでなければエントリーすらできないイベント。USオープンはこの“QS10,000”に位置する最高グレードのコンテストだ。
ちなみにUSオープンの優勝賞金は100,000USドル(日本円にして約1,240万円!)、各グレードの数字は優勝者が獲得できるポイントを表している。

※昨年までのQS(旧WQS)は、1〜6スターといわれる「スターシリーズ」と、最上級の「プライム」というイベントで構成。このプライムの位置付けが現在の QS10,000となるが、与えられるポイントは昨年以上のため重要視されている。

©Michael Lallande

さらにUSオープンはサーフィンだけでなくスケートやBMXのコンテストも同時進行で開催される、カリフォルニア最大の“真夏の祭典”。会場に集まるギャラリーの数はCTイベント以上といわれ、2015年大会のファイナルデイは約7万人強の観客が来場。
大会規模、観客数もさることながら、歴代の優勝者を見てもそのほとんどが現役CTサーファー。こうしたビッグネームが名を連ねる一大イベントでの優勝は、まさに歴史に残る大勝利といえるだろう。

US OPEN歴代優勝者(Men’s)
2004年 タジ・バロウ
2005年 アンディ・アイアンズ
2006年 ロブ・マチャド
2007年 C.J.・ホブグッド
2008年 ナサニエル・カラン
2009年 ブレット・シンプソン
2010年 ブレット・シンプソン
2011年 ケリー・スレーター
2012年 ジュリアン・ウィルソン
2013年 アレホ・ムニーツ
2014年 フィリッペ・トレド
2015年 大原洋人



後半戦、クオリファイ圏内を目指す大原洋人


USオープンの優勝で貴重な10,000ptを獲得した大原洋人は、QSランキングを13位までアップ。
これは81位だった洋人を、たった1試合の結果で一気に68もランクを押し上げるほどの貴重な成績で、夢のクオリファイが本当に手が届くところまできている。

しかしここからが正念場。 QSの最終ランキングは、年間の出場イベントのうち上位5戦の合計ポイントで決定するが、前途の通り2015年イベントはまだ半分も残っており、後半戦でどのような結果が出せるかにかかっている。

たった1回の勝利に大きな可能性があるのは他の選手にもいえること。今回のUSオープンと同様のグレード「QS10,000」のイベントはまだ5戦も残っており、大原洋人のように1回の優勝で一気にクオリファイ圏内へ入ってくる選手が現れる可能性も高い。もちろん、他の日本人選手にも可能性はまだ十分に残されている、という状況だ。
※昨年のダスティ・ペインは、全くのクオリファイ圏外から最終2戦のみの成績でCT入りを確定させてしまった。

だが逆に、この貴重な成績を1つ持っている大原洋人は、残るQS10,000や6,000の上位入賞があと1つでもあれば、CT入りはほぼ確定。その他のグレードでも、いくつかの好成績があれば十分に手が届く位置まで来ている。



クオリファイはQSランキングのTOP10名が対象だが、CTランキングでTOP22の選手は除くため、例えば現在ランキングでフィニッシュなら、フィリッペ、ジェレミーを除外して12位までの選手がクオリファイとなる。
後半はCTでツアーメンバーに残れない下位の選手が、リクオリファイを狙って精力的にQSイベントへ参戦してくる可能性も高く、CT側の動向と併せてますます目が離せない状況だ。

次回記事では、USオープン終了後の大原洋人、チームマネージャーの糟谷修自氏に直接質問を投げかけ、今回の優勝や今後の動きについてのコメントをインタビュー形式でお届けしたいと思う。

今回のビッグニュースをひとつのキッカケに、海外コンテストに興味を持ってくれた方がもしいれば、世界で戦う日本の若い力にぜひ注目して頂きたい。
そして2015年コンテストの後半戦と、大原洋人もイベントワイルドカードで出場が決定しているCT第8戦「Hurley Pro at Trestles」を共に楽しんで頂けたら嬉しく思う。



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