コラム特集
「a cat has nine lives」 - F+コラム
Text by つのだゆき、Photo by snowyなんか9月は瞬殺だったな。
毎日獣医さんに通って点滴、シリンジで1日3回の強制給餌、投薬、犬の散歩にほかの猫の世話で一日終了の連日だった。
トリ君は1か月入院ののち、1か月うちで上記のような生活を送り、結局2か月間、自分では水も飲まず、ご飯も食べずの日々だった。なかなかふさがらなかった術後の傷も何とかよくなって、回復傾向に転じるはずが今ひとつ停滞気味。しかし先日、ステロイドを注射してもらうと、状況が激変。その日病院から帰って数時間後には自分でご飯を食べ、水を飲んだ。もう大感動。いきなりそんなに食べてはいかがなものか、ぐらいな量を食べ、寝て、起きてまた食う、みたいな。ステロイドってすごい。
まぁ、副作用と天秤にかけながら最小限で使う、みたいな薬なわけだけど、トリ君には強力なゲームチェンジャーだった。
自分で食べ始めてまだ5日だけど、目力というか、顔つきがだいぶしっかりしてきたし、よく鳴くようになった。
具合が悪かった時には、まるでそこにいないかのようなつれない態度というか、ガン無視を決め込んでいたほかの猫たちだが、ご飯を食べ始めて少し体調がよくなると、急にトリ君のことを気にし始め、近くに行ってにおいをかいだりしている。
もしかして猫って、あちらの世界に死に行くものと、こちらの世界に帰ってくるものがわかるんだろうか? いや、わかるとしか思えない行動だ。
それは目の見えるジュンちゃんだけではなく、目の見えないヒカルくんやあっくんも同じようにしているので、彼らにしてみれば何かが違うわけだ。なんかなぁ、動物ってすごいし、猫ってそういうオーラ見えそうだもんな。
英語のことわざでa cat has nine lives というのがあるけど、もし猫に9個命があるなら、トリ君は今回3個使った感じ。最初の発作でひとつ、術後の経過が悪く衰弱したときにひとつ、これは輸血がゲームチェンジャーになったけど、最後のひとつは全身状態があまり改善せず、飲まず食わずでどんどん体重が減って衰弱死寸前でひとつ。これはステロイド注射で持ち直した。
今のところ残りの手持ち命は6個だけど、ステロイドと貧血改善の注射で何とか使わなくて済みそうな感じだ。後ろ足はないけど、2足歩行で移動可能。手術跡はまだ毛が生えていないのでそんなに動かせないけど、いやなことをされそうになった時の逃げ足はけっこう早い。動かないだろうと思ってうっかり放しておくと、けっこうな距離を移動していたりするので、目が離せない。
ようやくシリンジでの強制給餌から解放され、獣医さんも連日ではなくなり、だいぶ楽になった老猫介護生活だ。トイレも連れて行けば自分でできるし、ケージの中なら猫ベッドから器用に下半身だけ乗り出してシートにするし、徐々に術後生活のペースがお互いにわかってきた今日この頃だ。
肉体的にも精神的にも金銭的にも大変だったけど頑張ってよかったし、トリ君はもっともっと頑張ってくれた。頑張らせてごめんね、でも頑張ってくれてありがとう、しかないかな。
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