コラム特集
「サーフボードデザインに革命は起こるのか?」- F+(エフプラス)
Text by つのだゆき●質問1:近年サーフボードデザインに大きな変化はなく、結局、原点回帰しているように感じます。ユキさんは、今のサーフボードデザインが完成形だと考えますか?
これね~、まさに世界中のあちこちでもう何十年にもわたってこういう会話がなされているのだと思うけど、結局何も変わらないのが現実ではある。
今の形がサーフボードという道具の完成形なのかどうかはわからないし、完成形に興味はないけど、使う側のほとんどが今の形にある程度満足しているのは事実なんだと思う。だから変わらない。
もう何年も前にダニエル・トムソンが世に送り出したノーズのない板とか、デーン・レイノルズのテール切っちゃった板とか、その辺は近年ではだいぶ革新的というか斬新だった部類だと思う。でも結局今、元の形が定着しているということは、使う側が元の形を選んだということだ。
この件に関して、ずいぶん前にマット・バイオロス(メイヘム)と話をしたことがあるのだが、その時にメイヘムは、どのシェイパーにも斬新で奇抜なアイデアはたくさんあるんだ。でも結局トップサーファーたちは今の形からの極端な変化を嫌う。だから変わらない、と言っていた。まぁ、これに尽きるんだろうと思う。
1920年代、30年代のレッドウッド、バルサ素材から、第2次世界大戦を経て40年代後半には今のストリンガーのあるファイバーグラスのボードが誕生している。
余談だが、この第2次世界大戦によるテクノロジーの発展はサーフギアにも大きな影響を及ぼしている。サーフボード素材の大革命、ウエットスーツの誕生、今のサーフギアのベーステクノロジーは第2次世界大戦の軍事需要によって生まれたともいえるのだ。
60年代終盤から70年代のサーフボードレボリューションでは、ボードの長さが10フィート以上から6フィートへと極端に短くなり、サーフィンそのものの目的も、ただ波に乗る、から自由にマニューバーを描く、に大きく変わった。バテンス時代の到来だ。
そして1981年、サイモン・アンダーソンによるスラスター、トライフィンが登場する。これが今のところサーフボード最後の大革命といえる。
あれから40年。ぶっちゃけサーフボードにあまり大きな変化はない。まぁ、フィンの数が増えたり大小があったり、テールの形状がいろいろあったりと、マイナーチェンジというレベルの変化はあるが、どの変化も流行の域を出ない。81年以前までのような、一気に流れが変わるような革命的変化はない。
だからこそ、どこかにもっと大きな革新の要素があるはずだ、と革新ハンティングをするのがここ10年ぐらいのケリーだけど、現状、1981年に登場したスラスターをベースにした形のアレンジ以上のものは出ていない。
ご質問は、だからこれが完成形だと思うかどうか、だけど、物事に完成形などない。例えば海水に入れると膨らむボード、ポケットに入れて持ち運びできる、みたいな夢の素材が現れるかもしれない。バルサボードの時代からすれば、ウレタンフォームの板なんて、そういうレベルの夢の素材だ。
ステレオがウォークマンになって歩き出し、電話が携帯になって歩き出し、今やテレビもステレオもゲーム機も、みんなケータイの中で一緒に歩いている。だから、サーフボードがポケットの中に入る時代だってこない、とは言えない。
●質問2:WSLファイナルズの採用で、ケリーの12回目のワールドチャンピオンの可能性は、上がったのか?
トップ5に入り、ファイナルズの会場がパイプ、地形もよく、コンディションはバックドアメインのエキスパートオンリーのビッグサイズ、完全バレル勝負、みたいことになれば、だいぶ可能性は上がると思う。ただ、最初の条件のトップ5に入り、ってところのクリアが難しいかな、と思う。今のガブを越えるサーフィンを身につけて再度ツアーバスの運転席界隈に座る、それが条件になるわけだけど、さすがに50過ぎてそれは……あったら本当にすごいし、世の中の多くのケリーファンと同じように、奇跡が起きるのを見たいとは思う。みんな泣くんだろうな。でも同時に、そこまで求められる人生もキッツイなぁ、と思う。
ロングではジョエル・チューダーの45歳ワールドタイトルって最年長記録が先ごろできたけど、45歳と50歳は肉体的にだいぶ違うし、ロングとショートもだいぶ違う。
現実的にはパイプで優勝が花道ということになるんだろうと思う。
写真は現在鋭意制作中の2022カレンダー。今回は2001年から今年までのワールドチャンピオンを集めてみました。新作のオーストラリアレッグからの写真あり、アーカイブ写真ありで、なかなかいい出来だと思います。今しばらくお待ちを!
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